【幻】と呼ばれる地酒の実情と余談
最近、体重が80kg超えになって夕飯を食べない生活を実行している左京青年部長 岡本です。
勝駒が他の富山県産酒との「違いや差」は別にありません。「幻だ!」と言われたのが発端なのではないでしょうか。
そもそもこのようなもてはやされ方は誰も望んでいませんし、富山県の酒蔵には他県には及ばないものの、
「2年連続全国新酒鑑評会で金賞を受賞した若干30歳の杜氏」や「IWCでゴールドメダルを獲得し、今最も注目を浴びている酒蔵」もあります。
それよりも、インターネットでは「富山 酒 幻」と検索したら、サクッと勝駒が出てきます。
情報のほうが先に来ているのであって、富山県産で勝駒が一番だとは誰も言っていないのが現状です。
「蔵人の数も生産石高」も富山県内ですともう中堅クラスです。
蔵人も作る量も、もっと小さい酒蔵はたくさんあります。
一部ネットでは「造り手が少ない、量が少ない」と書かれていますが、現在はそこそこスタッフもいますし、量も多く増やしてはいないですが、小さくはないです。
お酒そのものは、3月中旬から通年酒が入荷し始めますが、まずは、長年ご贔屓いただいている飲食店様に先に出すことにしております。
なお、勝駒の現状について、下記に少しお書きしますので、よろしければお時間のある時にお読みいただければ幸いです。
【勝駒の現状】
弊社代表と清都蔵元は高校時代の同級生でして、旧知の仲です。
20数年前、勝駒が全く売れず(ある大手酒蔵にタンク頃売却するほど)辛かった時代に、弊社でどうしたら勝駒が売れるかを話し合っていました。
その時に、小さな瓶に移し替えて地元の飲食店様に試飲を持って挨拶に行きました。
その中のいくつかの飲食店様が(当時は越乃寒梅などが地元高岡でも席巻していました)「勝駒旨いがいね。俺売ってやっちゃ。明日から勝駒持ってこられ!」と名乗りを上げてくださいました。
その御恩が清都さんも私達なかやすもあるものですから、弊社に入荷した勝駒はまず優先順位的に
地元の飲食店様→
昔からご愛顧頂いてるお客様→
店頭販売→
DM、ネット会員様→
メルマガ会員様へのご案内と続いています。
これについては「弊社は、客を選んでいる!ずるい!」とご批判も頂いたこともありました。
ですが、選んでいるのではなく、勝駒を愛してくださる方に先にご案内しているだけです。
この点の説明は一部の方には、ご理解いただくことはできませんが、大事にしているものを大事にしてくださる方にお伝えする。それはどんなときにでも当たり前のことです。
そして、何より、大事にしない方こそ、なぜが買えないと「怒り、怒鳴り」ます。
この状況をご存じの方は「また買えるときまで待ってるよ~」と言ってくださいます。
実際今は勝駒のブームです。それも一部の熱狂的なファンや転売目的のブローカーたちが、インターネット上にて、やれ「幻だ。」「日本で一番小さい酒蔵だ」と書いているのでその熱が冷めません。現状5,000円の大吟醸が30,000円(約6倍)近い値が付けられ、富山市内のルール違反の安売酒屋やヤフーオークションで売買されています。
温度管理も酒や酒蔵を大事にもしない人たちが、全国中から私利私欲のために買い漁っているのです。
それで酒蔵を守れるのでしょうか?蔵から出荷する酒は正規価格なので、プレミアがどれだけついても蔵は全く良くなりません。
それどころか、熱を上げて、その熱が冷めたときのブームの衰退は尋常ではありません。
一昔前のブームは、「口コミ」でした。なので、ブームの終焉はありました。
しかし、今のブームの形成は「インターネット」です。
検索サイトで「勝駒 富山」と検索しましたら、口コミなら静まることもありますが、ネット検索ですと、何年も前の情報も、さも昨日今日の情報のように出てきます。
昔の「幻」や「地元飲食店にしか置いていない限定酒」などの情報は古いのに、見方によっては最新情報のように出ています。
ブームのあり方も今も昔も全く違います。
それで、勝駒さんには全国中からブローカーが現れ、玄関のドアをガタガタし壊れるほどに怒鳴っていくのです。電話対応のアルバイトさんも怒りの電話のノイローゼで辞めていったとも聞きました。
もうブームなんて早く終わったら良いのです。
「幻の酒は富山の勝駒ではなく、◯◯県の◯◯酒造だった!」
なんて情報が出て、ブローカーたちがみんなそっちに向いてくれればよいのです。
そして、静かになって、美味しい勝駒を「飲みたい!」と言ってくださるファンの方々でたっぷりと楽しみたいのです。
勝駒のブーム以外にもいくつもマスコミにもてはやされた酒があります。
代表的な酒蔵と言えば、一つ。山口県の獺祭があるでしょう。
なぜ、獺祭は勝駒のようにならないのでしょうか。
それには決定的な違いがあります。
勝駒はどんなブームが起きようと、酒を大量生産をしません。
(獺祭の桜井社長は、求められる分を作り、どなたにでも飲んでいただけるように生産されているので、多く造ることを批判しているわけではありません。需要と供給のバランスがとても素晴らしいと思います。)
清都蔵元は「手作りにこだわり、地元とファンの方だけに愛していただければそれで十分。
それだけの酒の量はもう既に造っている。そうじゃないひとたちが買い漁っているだけだから、
ブームが終わればちゃんと足りるから。」と仰っておられます。
ですが、それ以外のいくつかの酒蔵はブームの波に乗って量産します。
工場も大きくし、場合によっては機械化します。なので、勝駒ほど「手に入らない=プレミアムだ!」は起こらないようになっているだけなのです。
勝駒は、ほんとうに美味しい酒造りをしています。
能登杜氏としても素晴らしい杜氏を迎えています。
お米の選定から、磨き、造り、商品化まですべてにこだわり抜いています。
数年前から息子も参画し、本物の酒造りを徹底しています。
私達特約店も仲間に入れていただきながら年に数回集まって、利き酒をしたり情報交換をして、蔵とともに商売をさせていただいています。
こんな風に全国でもてはやされるとは、清都さんも弊社も全く思っていませんでした。
ただただ、地元で愛される酒蔵になりたい一心で、良い酒を造り、人に愛される酒を造りたいだけなのです。
なかなかご購入することが出来ず、ご案内もろくにできずご迷惑とご心配ばかりおかけして、大変申し訳ございません。
もうしばらくこのような状況が続くのでは?と皆で頭を悩ましておりますが、必ずブームは終わります。
それでも勝駒の酒に対する真摯な姿勢、情熱は変わること無く味わいに出ます。
また、気軽に買える日が来ます。
by k-r-s | 2018-07-31 21:11